9 月
10
2019
By hiros
先週早稲田大学の帰国生入試が実施されました。教え子が問題を持ち帰ってきてくれたので、小論文Bの内容を速報でお伝えします。
早稲田の帰国生入試問題は基本的に学部共通試験で、小論文Bは文系学部を受験する生徒の多くが受験する科目です。そのため、出題テーマは志望学部による有利不利が生じないような、一般向け新書レベルの内容がよく選ばれます。
今年の出典は、養老孟子氏の『いちばん大事なこと』で、人間の身体と環境の関係について考察した文章が出題されています。問1で筆者の主張を要約(200-300字)し、問2で自分の考えを述べる(300-400字)というスタイルは例年通りです。
課題文で著者は、「人間」対「自然」という図式は成り立たない、自然は「外の自然」だけを指すのではなく、「身体」も「内なる自然」なのだと主張しています。川の水が入れ替わっているのと同様に身体を構成している物質も入れ替わっているということを根拠に、身体は生態系=自然だと述べている点が、環境問題に対する新たな見方となっています。
この課題文のように、一般的な見方とは異なる見方が提示された文章を早稲田の帰国生小論文ではよく出題してきます。過去を遡ってみると、
- 自由に書かせると作文が画一的な内容になり、形式を縛ると多様な内容の作文になるというパラドックスを扱った文章
- 相手と自分が同じであることを前提にした「感情移入」は、違いを前提にした「他者理解」とは異なるという内容の文章
- 「日本人」とは、人によって異なる「認識」が生み出している概念に過ぎないということを述べた文章
等々、逆説的・複眼的・アイロニカルな見方が提示された素材文がよく出題されるので、小論文の対策とはいえ、書くこと以上に哲学的な問いについて考えるトレーニングが重要になります。
GLICCでは、そのような対策を『Thinking Experiments』をサブテキストにして行っています。
英語で書かれてはいますが、小論文の「考えるトレーニング」としては実に有効なヒントが満載です。