21世紀型教育機構が「英語哲学対話」のイベントを実施

21世紀型教育機構で7月11日に英語哲学対話のオンラインイベントが開催されました


私は事務局の一員としてこのイベントに関わりましたが、まず生徒たちの主体性に驚かされました。「期末テストの最中だから生徒の参加は難しいかなあ」と反応していた先生の予想に反して、「自分はこのイベントに出てみたいのだけど、どうすればよいか」と先生に尋ねてきた生徒もいたようですし、中には、21世紀型教育機構のホームページを見てイベントの存在を知り、自分は21世紀型教育機構の学校に所属しているので、このイベントに出られるのかと直接問い合わせをしてきた生徒もいます。

そもそもこのイベントは大きな宣伝をしていないので、オンライン学習がメインになっているこの時期、クラスでのチラシ配布なども難しい中で、21CEO加盟校内部でもイベントのことを知らない人は多かったのではないかと思います。ところが、参加生徒たちはアンテナ高くこのイベントをキャッチし、自ら参加を表明してきたわけです。こういった姿に「頼もしさ」を感じたのが私の率直な思いです。
 
さらに、彼らのディスカッションでの傾聴力にも驚きました。英語力の高さというと、ペラペラ喋れるという形容がすぐに出てきますが、決まった言い回しをいくら流暢に話せてもそれは本当のコミュニケーションにはつながりません。大切なことは思考に合わせてそれを表現することであり、それは必ずしも流暢になることを意味しません。どう表現すれば相手に伝わるか、自分の表現パターンの組み合わせから、どうにかこうにか自分の言わんとすることを70パーセントほど表現できれば上出来というものでしょう。

したがって、聞く側の傾聴力が大事になります。そして、相手の真意をくみ取り、自分なりに補足したり、確認したりしながら、議論を構築していくわけです。生徒たちは、このことが経験的にわかっているはずです。自分も苦労するからこそ、他人の意見にじっと耳を傾ける姿勢が身についているのでしょう。

もちろんここにはファシリテーターであるAlex Dutson先生の存在が大きく関わっています。GLICCでも英語哲学対話を担当しているAlex先生は、哲学対話のファシリテーションの熟達者です。哲学そのものへの専門性に加え、ノンネイティブの生徒の思考力と英語力のギャップについてよく理解しています。生徒が真に言いたいことをキャッチして、さりげなくパラフレーズしてくれます。ですから、生徒は、言いたかったけれど十分には表現しきれなかったことをうまく補ってもらう満足感を得ることになります。

よく英語の試験のスコアは高くても海外でディスカッションできない日本人学生が多いと言われます。実際、短期留学から帰ってきた生徒から、現地でディスカッションで自分の意見が話せなくて悔しかったという声を耳にすることがあります。これは英語スキルが思考スキルと乖離してしまっていることが原因です。

しかし、この日参加していた生徒たちは、そんなイメージからはほど遠く、堂々と世界で対話できるグローバル市民であると確信しました。その大きな理由の一つは、フラットな対話ができることです。哲学対話の良いところは、英語の流暢さとか言い回しの洗練さなどではなく、話の中身にフォーカスされるところです。話のポイントは何なのか、どういう理由で、どのような立場を表明しようとしているのかということが重視されているのです。
 
参加していた生徒は、中1から高3まで合計11名おり、最初はやや緊張している様子ですが、後半以降は、誰かの発言に対してファシリテーターを介さずダイレクトに自分の意見を加えたり、異なる見方を提示したりしていました。3時間という長いセッションであったにもかかわらず、最後の笑顔はそれぞれの満足感を表していたと言ってよいでしょう。

富士見丘から参加した3名の生徒が、学校のホームページで彼らの感想を英語で述べています。学校側のこういった素早い対応も21世紀型教育機構の特長です。