京都大学文学部に一般受験で合格!ある帰国生の話

本日3月10日は東京大学や京都大学の前期試験の発表日でした。私が放課後の大学受験講習をサポートしている都内のある私立高校からは京都大学を受験した生徒がいて、文学部に見事合格したとの連絡がありました。

この生徒は、6年前に帰国生入試でこの私立学校に入学しました。寡黙で一人で過ごすことの多い生徒でしたが、知的好奇心の旺盛な生徒で、高2以降に行われた現代文の大学受験講習では、文章に関連した「脱線」になると視線をこちらにぐっと向けてきていたことが印象に残っています。

「脱線」とはいっても、私にとってはこちらが本流みたいなもので、「受験には関係ないからこんな本読んでいてはダメだよ」と前置きしつつ、ニーチェの『道徳の系譜』とか『善悪の彼岸』などの話をちらりとするのです。もちろん本当に受験には関係ないので、内容に深入りはしません。他にも江戸川乱歩の少年向けではない本とかフロイトの『精神分析学入門』などの書名を挙げながら、「絶対に読んではいけません」と釘を刺します。多くの生徒がスルーする中で、しかし、彼はこういう「釣り」に反応してくるタイプの生徒でした。授業後に「さっきの本ですが、優先順位としてはどちらがお勧めですか」などと聞いてくるわけです。私は「こんな本読んでる場合じゃないよ」と言いつつ、さらに毒のある本を紹介するということをしていました。ちなみに私は文学には毒がないと意味がないし、それが毒であると意識することでクリティカルシンキングが育つと考えています。

受験とは、「無駄のない、効率的な勉強」をして合格を勝ち取るというイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、大学受験においては決してそんなことはありません。無駄こそ豊穣ですし、豊穣を知らないと楽しみも得られないのです。楽しみのない受験勉強なんて苦痛でしかないでしょう。
 
彼は倫理学を学びたいということで京大の文学部を志望しましたが、この生徒以外にもこの私立学校には帰国生として入学する生徒が毎年たくさんいます。入学したころには国語に苦労していたのに、なぜか高3の時には帳尻を合わせてくるのが不思議です。このあたりの話は3月21日の海外帰国生のための進学説明会でお話する予定です。

この私立学校の放課後講習を受講していた生徒何人かと本日話をすることができましたが、一橋大、北大、筑波大、電通大など、第一志望の国立大学にみな合格していました。彼らに共通していることは、他人との比較で自分を見ていない点にあります。どの生徒も自分のやりたいことに関連した学部を目指し合格を果たしました。
 
小学生をお持ちの保護者にお伝えしたいのは、小学生のうちに少々ボーっとしているように見えても気にすることはないということです。大切なのは、自分が集団の中でこんなものなのだという先入観を持たせないようにすることです。そんな刷り込みを小学生にしてはいけません。だからGLICCでも受験相談に偏差値表は決して使わないのです。