2017年中学入試の振り返り―帰国生・国際生入試

2月に首都圏模試センターが主催した中学入試の情報共有会の模様が「2017年入試結果一覧」冊子(コラボミーティング誌上座談会記事掲載)となって発行されました。2017年度中学入試362校分のデータが網羅された保存版です。私も帰国生入試についてお話させていただいたので、そのパートだけご紹介します。


帰国生入試のカテゴリー

 冊子の方では省略されていますが、上のチャートをもとに話をしたので参照してください(実際にはそれぞれのカテゴリーに合わせて学校名を入れた資料もお配りしました)。以下が冊子に掲載された部分です。

 帰国生入試とひとくちに言っても、国語・算数の学力を重視する学校もあれば、英語と2科の組み合わせで入試を行う学校、あるいは英語エッセイや英語面接のみで選考する学校もあります。科目が多様であるというばかりではなく、知識重視か表現力重視かという観点で見ても、帰国生入試の中身は、学校によって様々です。
 今年の全体傾向として、従来型以外の入試が増えているというお話がありましたが、帰国生入試では特にその流れが進んでいると言えます。もちろん、日本人学校に通っているといった背景などを考慮し、国算型での帰国生入試を実施する学校はまだまだ多くあります。これらの学校では、中学入学後に一般生との学力差が大きく出ないように国•算の学力基盤を大切にしているため、こうした形式の選考を続けているといえるでしょう。
 しかし一方で、英語力を重視し、国算のテストは課さないという学校の存在感も増してきています。三田国際学園や開智日本橋、大妻中野、都市大等々力、かえつ有明、富士見丘、頌栄女子学院、桐朋女子、攻玉社、東京学芸大附属国際、都立立川国際などの学校では、英語(Essayを含む)と面接、日本語作文などの組み合わせによって選考を行っています。この中でも、英語エッセイと面接によって思考力表現力を重視している学校もあれば、筆記試験の得点力を重視している学校もあるといった違いはあります。
 また、英語のみの入試と要項に明記していなくても事実上英語力で選考が行われている学校もあります。例えば、渋谷教育学園渋谷は「英・国・算・英語面接」で入試を実施していますが、得点として重視しているのは「英語力のみ」と学校説明会などで話しています。英検準1級や1級レベルの実力を持つ生徒たちが入学しますから、英語力だけを取ってそのまま大学受験をしてもAO入試で早稲田の国際教養学部や上智の国際教養学部などに入ることのできる資質が十分にあると言えるでしょう。
 仮に大学受験のことだけを考えるならば、英語の力を維持させていけば心配はないので、その他の学力については生徒たちのペースで6年間かけて学んでいけばよいという考え方があるわけです。そのことがわかっている学校は、思い切って英語力を重視した入試を行っているのだと思います。
 入試は学校の教育の顔ともいえるものです。預かった生徒を6年間の中でどう教育するのかということが入試の出題傾向から見えてくるでしょう。英語重視、思考力表現力重視の方向に学校全体の意志を統一するということは2020年の大学入試改革を見据えればかなり重要なポイントとなっていると言えます。中学入試がそういう方向にシフトしている学校は、学校内部のコンセンサスが取れているということを意味しているかもしれません。
 帰国生以外の入試でも思考力入試や英語入試が増加しているのは、そういうことに学校側も気がついてきたということでしょう。例えば小学校低学年のうちだけ海外生活を送り、その後は国内のインターナショナルスクールに通っていた子どもの場合、帰国生の受験資格を満たせない場合も多々あるわけで、英語入試や思考力入試を行う学校というのは、そういう意味でも保護者に受け入れられているのだと思います。