中国の高校生の学習量

「日本の高校生が午後3時くらいに学校を終わって町を歩いているのを見て驚きました」ー中国の留学生オリヴィアさんが日本に来たばかりの時に感じた印象です。GLICC Weekly Edu 第19回のライブ配信「グローバル教育について考える」の中で話しています。

中国で全寮制の中高一貫校に通っていたオリヴィアさんにとって、朝7時半から夜は8時半頃まで勉強するのは当たり前のことだったそうですから、そんなに早く下校できることに驚くのも無理はありません。

もちろん部活を熱心にやっている生徒はその時間に下校してはいないでしょうし、学校が終わった後に課外活動に参加したり、塾や予備校に通っている生徒も多いはずです。そういう意味では日本の高校生が中国の高校生よりも学習経験が少ないとは一概に言えません。しかし、どちらの競争が熾烈かと言えば、それは明らかに中国の大学受験の方でしょう。

ストレスがかかる環境は好ましくありませんが、そのような競争をくぐり抜けてきた生徒は、結果的にサバイバル力を身につけます。例えばオリヴィアさんの場合、母語の北京語に加えて、英語と日本語がネイティブ並みの実力です。さらに、大学の留学制度を利用して、ヨーロッパでも半年のホームステイ体験をしています。このようなサバイバル力は彼女一人だけの特性ではありません。私が放課後の大学受験講習を担当している私立学校では、中国の留学生を受け入れましたが、その生徒は彼女にとって外国語である日本語で日本の大学受験にチャレンジし、当時のセンター試験の国語で9割以上の得点をマーク、結果的に東京大学に合格しました。努力の量が並みではないのです。

オリヴィアさんに話を戻すと、彼女は日本で就職をし、そのまま日本に暮らすつもりでいます。母国に戻って日本語が使えることをアドバンテージにしようなどというレベルではなく、ネイティブの日本人と日本語で真っ向勝負を挑んでいるわけです。この事実は私たちに何かを突き付けてこないでしょうか。「どうせ英語ネイティブにはなれない」だとか、「英語が話せるからと言って偉いわけではない」など、当たり前の戯言です。「で?あなたは何がしたいの?」

英語が話せない言い訳をいつまでも言っていても仕方がありません。議論していくらでも恥をかいて、それでも相手に何かを伝えられることに可能性が感じられるなら、その道を進んでいくしかないのではないでしょうか。

批判的思考を封印し、今与えられた目の前の課題を粛々とこなしていくのか、それとも創造性が発揮できる道を切り開くような才能を磨くのか。後者はリスクが高いと考えられがちですが、中国・インド・東南アジアの若い力を考えに入れれば、前者の道こそリスクなのかもしれません。