富永チューターの【数式のない算数・数学】ー第4回「桜修館の適性検査」

チューターの富永です。今回は、都立桜修館中等教育学校の適性検査について見ていこうと思います。

適性検査に関して、実は出題の方針が公開されています。ここでは一つ、適性検査の算数の問題の出題方針と問題を見ていくことにします。

例えば平成29年度の問題では、主に算数の分野からは以下のような狙いで問題が出題されました。

「けん玉大会を題材とし、けん玉大会の会場の飾りの面積を正確に計算する力、与えられた方法を使って皿の深さなどを導き出す力、連続技の構成から競技の得点を論理的に導き出す力などを見る。」

さて、以上をふまえて実際に出題された問題を見ていきます。問題は学校のHPで公開されています。(http://www.oshukanchuto-e.metro.tokyo.jp/site/zen/content/000085908.pdf)

算数に関する問題は大問1です。問題は大雑把に言うと、方眼紙を見て色のついた部分の面積を求める問題と、先生と生徒の対話を読み取りそこから数字を計算する問題、表から論理的に数字を導き出す問題でした。問題全体の外観としては、受験算数の”知識”はそこまで求められておらず、むしろ問題文を読み取る力とそこから式を立てられる力が重視されています。
特に3つ目の問題の答えを確認していきましょう。(1)は、大から中が4点、小から中が5点です。これは、表4から、例えば連続技2では皿に乗った基本点が25点、大から中への追加点が二回分なのでそこから大から中への追加点が4点なことがわかります。また、(2)は答えが複数ありますが、(1)が正当出来れば問題なく得点が計算できます。例えば小大中小みたいな連続技が考えられ、このときの得点は基本点が40点、追加点が11点なので合計点は51点です。(3)は一回目に連続技2を行ったと書かれているので、残りは大2回、小4回、中1回乗ることになります。表5の総得点が114点なので、連続技二回分の得点は81点ですが、ここから基本点を引くと16点なので、二回分の連続技の追加点は16点です。なので、例えば二回目の連続技で小中小のようにして、三回目の連続技は小大小大のようにすればよいです。

このような問題への対策としては、まず問題文を正しく読む、すなわち国語力の強化が先決です。二つ目の問題までは問題文が正しく読めれば算数としては何も困難はない問題でした。
三問目は上二つと比べてやや難易度が高いうえ、特に三つ目の問題はやや中学受験チックでもあります。しかし、問題を解くうえで最も大切だったのは問題文を正しく読む力であり、多少の中学受験算数の問題に慣れがあれば十分取り組める範囲内の問題だったと思います。

同じく中学受験でも、似たような出題傾向は他校にも認められます。麻布中学の次の問題を見ていきましょう。

平成23 麻布 改
[][]/[]+[]/[][]の6か所の空欄に、1から9までの整数を一つずつ同じものを二回入れないように入れて計算する。計算した値が25になる数字の入れ方をすべて答えよ。

こういった問題は特別なテクニックがあるわけでもなく、地道に一つ一つ見ていくということが大事になります。とはいっても何も考えずに一つ一つ代入していくのは大変なので、いくらか場合を絞っておきましょう。
まず一つ目の分数の分母ですが、二つ目の分数が1を越えないため、一つ目の分数がある程度大きくないといけません。そこで、分母を5より大きくしてしまうと一つ目の分数が20を越さなくなってしまうため、一つ目の分数の分母は1から4までの整数です。
そこで25から一つ目の分数の値を引いて、それが0より大きくて1より小さいようなものを考えます。一つ目の分数の分母が1だと二つ目の分数の値も整数にならなければならないのでダメです。一つ目の分数の分母が2の時、一つ目の分数を49/2とすれば二つ目の分数を8/16とできてokです。一つ目の分数の分母が3の時、一つ目の分数を74/3とすれば二つ目の分数を6/18とすればよく、一つ目の分数を73/3とはできないので、一つ目の分数の分母が3の時は74/3+6/18の形のみになります。一つ目の分数の分母が4の時は、一つ目の分数を98/4とすれば二つ目の分数を6/12とでき、一つ目の分数を97/4としては足して25とできないことが計算によって確かめられるので、求める場合は98/4+6/12のみとなります。

上の問題で大切だったのは、もちろん問題文の意味を理解すること、そしてそこから素直に計算を始めていくことでした。テクニックや解法といったようなもので上の問題を解こうとするのには多少無理があるように思います。もちろん、桜修館と比べて問題文の意味を読み取った後の苦労は多くなりますが、それでも何より大切なのは問題文の意味を正しく読み取ることと、そこから素直に計算を始めるところです。

(麻布の問題を見ていて面白かったのが、結構中国剰余定理に関する問題が多いことですね。中国剰余定理自体が整数論の中でも重要な定理でありますし、よく数学オリンピックなどでも出題のネタにされる整数の性質です。気になる方は以下のリンクをご覧ください。http://mathtrain.jp/chinese

こういった問題に対応できるかどうかは、基本的、典型的と言われるような問題を解けるようになった後に、見たことのあるような問題はすぐに解けるように復習を徹底することと、頭から受験テクニックによってどんな問題でも解けるといった発想を捨てて、素直に目の前の問題を理解して取り組んでいくこと、そういった経験の多さが分かれ目になると思います。