昭和女子大附属昭和ー好奇心から始まる、新しい女子教育のカタチ

By studyextension on 2025/12/21(Sun) - 13:24

昭和女子大附属昭和ー好奇心から始まる、新しい女子教育のカタチ

 「女子校」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。おしとやかなマナー教育、伝統を重んじる校風、あるいは、そのまま系列の女子大学へ進むための場所。そんなステレオタイプは、もはや過去のものかもしれません。少なくとも、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校(以下、昭和女子)においては、そのような「常識」はあたりません。
 

 この学校の常識破りを象徴するのが、校長室の光景です。生物学者である金子誠校長の机の横には、一匹のウーパールーパーが悠々と泳いでいます。しかし、これは単なるペットではありません。生徒たちの好奇心に火をつけるための、意図的に仕掛けられた「ツール」です。このウーパールーパーから始まる対話こそ、同校が最も大切にする「知的探究心」の入り口なのです。
 今回のGWEは、そんな昭和女子が実践する、これまでの女子教育の枠を軽々と飛び越える秘密に迫ります。

三軒茶屋が「世界」だった。キャンパスに「アメリカとイギリス」がある日常

 昭和女子のキャンパスは、東京の三軒茶屋にあります。しかし、その敷地内に足を踏み入れると、そこはもはや日本だけではありません。同じキャンパス内に、ブリティッシュ・スクール・イン・東京(BST)とテンプル大学ジャパンキャンパスが共存しているのです。
 これは単なる物理的な近さではなく、深く統合された「共生関係」を意味します。昭和の生徒がBSTの最新の実験室で「英国式のサイエンス実験授業」を受ける一方、BSTの生徒は昭和女子の調理室を使ってクッキングクラブの活動をしたり、茶道や書道を体験したりします。お互いの施設と文化を日常的に分かち合う、真に融合したコミュニティなのです。希望者は高校在学中にテンプル大学の授業を履修し、正規の大学単位を取得できる制度にも参加できます。
 ここでは「グローバル教育」は特別なイベントではありません。イギリス式の授業を受け、アメリカの大学の空気に触れることが、日々の通学路の風景なのです。世界は、教室のすぐ外に広がっています。

「知る→考える→行動する」。本当のグローバル教育は、アクションがすべて

 昭和女子が定義する「グローバル」は、単に英語が話せることではありません。そこには、明確で力強い哲学が存在します。それが、「知る (Know) → 考える (Think) → 行動する (Act)」という3ステップのフレームワークです。
 この哲学について、真下校長は国連で働いていた友人の言葉を借りて、その本質を語ります。
「内情を知ること。で、知ったらそれをどうしてなんだろうって考えること。で、考えて止めちゃだめで、最終的にそれに対して自分がアクションすること。この3つが揃わなければグローバルじゃないんだ」

 この哲学は、具体的なプログラムにも貫かれています。例えば、グローバルコースの生徒は高校1年次に、カナダへ10ヶ月間の留学が必須となっています。現地の社会を「知り」、課題を「考え」、そして帰国後の「アクション」へとつなげるのです。昭和女子において「グローバル人材」とは、流暢な英語話者ではなく、世界をより良い場所にするための「行動者」なのです。

 

ボストンに「自前の校舎」。ハーバードが“雲の上の存在”じゃなくなる理由

 多くの学校が海外研修を外部業者に委託する中、昭和女子はアメリカ・ボストンに寮と教室を完備した自前のキャンパス「昭和ボストン」を所有しています。この資産が、生徒たちの意識を劇的に変えています。
 中学2年生は全員が2週間、このボストン校舎で研修を行います。さらに、本科コースとサイエンスコースの高校1年生向けには、3ヶ月間の「ターム留学」プログラムも用意されています。
 この意味は重大です。生徒たちはハーバード大学やMITに囲まれた世界最高峰の学術都市で生活するだけでなく、現実的な道筋を手に入れます。というのも、昭和ボストンのスタッフには、ハーバード大学の卒業生や、自身の子どもをハーバードに導いた経験を持つ指導者がいるからです。彼らから直接的な助言を受けることで、これまで「雲の上の存在」だった海外トップ大学が、生々しいリアリティを持った、挑戦可能な目標へと変わるのです。

 

理科は「研究」が基本。『マトリックス』や化粧品科学に挑む中高生

 スーパーサイエンスコースの目的は、難関大学の入試問題を解くことではありません。生徒一人ひとりの純粋な好奇心から生まれる、本物の「研究」を実践することなのです。そのテーマは、中高生のレベルを遥かに超えています。
 慶應義塾大学の教授陣と連携し、脳とコンピューターを直接つなぐ実験(映画『マトリックス』さながらの研究)に参加したのは、なんと中学1年生。他にも、様々な言語の発音特性を科学的に解析する生徒や、佐賀大学が新設した「コスメティックサイエンス」の研究者と化粧品の科学に迫る生徒もいます。
 これらの機会は、科学者でもある真下校長のネットワークから生まれることが少なくありません。そして、導入部で紹介した校長室のウーパールーパーは、まさにこの哲学の結実を示すものです。ある生徒はウーパールーパーに魅了され、校長の「師匠」と呼ばれるほど飼育を探究。ついには自ら京都大学の両生類研究施設を訪ね、現在はボストンからオンラインで国際的な研究会での発表準備を進めています。好奇心の「ツール」が、本物の研究者を生み出した瞬間です。

 

高校3年生で、医大生になる。常識を超える「高大連携」の新形態

 そして2027年、教育界の常識を覆すプログラムが始動します。昭和女子の高校3年生に在籍しながら、昭和医科大学で学ぶ「五修生制度」ができるようになるのです。

 これは、同校が昭和女子大学との間で既に実績のある五修生制度を昭和医科大学との間で発展させたもの。単なる「飛び級」ではなく、生徒は昭和女子を卒業する資格を持ちながら、同時に大学医学部1年次の授業に参加する、まさに「シームレス」な教育連携です。高校生活と大学生活を統合する、高大連携の究極の形と言えます。

 医学への強い情熱を持つ生徒にとって、これ以上ないアドバンテージです。1年早く専門分野の学びに没頭し、プロフェッショナルへの道を加速させることができます。これは、生徒の可能性を最大限に引き出すための、学校からの大胆な挑戦なのです。