東大のホームページに2017年度帰国生入試の小論文の問題が掲載されています。
東大の帰国生小論文は、日本語に接する機会が多くなかったであろう海外生に配慮したもので、難解な課題文が課されるということはありません。それでいて、知識の取り出しだけでは十分な解答とはなり得ないような、高次思考を要求する問題が例年出題されます。
今年の文科一類の出題は次のようなものでした。
「給付型の奨学金は、低所得世帯の子供たちの進学に当たっての経済的負担を軽減し、進学の機会の平等を図ることがそのような制度を設ける意義であることからすれば、その返還が免除されるための条件として、大学進学後の学修において一定の成績基準を満たすことを要求すべきではない」との意見がある。このような意見の当否について多角的に論じなさい。
ちょうど昨年末から今年にかけて話題になった給付型奨学金を取り上げた出題です。タイムリーなトピックが取り上げられるのは、珍しくありませんし、時事問題として知識が問われている訳ではないのも、例年通りです。欧米に比べて日本では給付型奨学金が少ないことはメディアでも話題になっており、経済格差が進学機会の平等を妨げているという言説についても、大学受験生であれば耳にしているはずです。
押さえるべきポイントはまず「ニードベース」と「メリットベース」という論点でしょう。ただし、「多角的に論じなさい」という条件から考えると、単に両者を切り分けて論じるだけではなく、給付型奨学金にメリットベースの考え方が入り込んでくる日本社会の風潮といったものに目を向けることが問われているのかもしれません。
今年度の受講生と論議してみたい問題です。