多様性と創造的思考ー帰国生指導を通して

毎年夏になると、海外の高校を卒業した帰国生を相手に、大学受験小論文の授業を連日行います。

9月に入試がある早稲田や慶応を目標に過去問などを地味に練習する一方で、対話やグループワークなどを盛り込んで、多様な考えに触れられるようにしています。
生徒が滞在していた国は、ヨーロッパやアメリカ、アジアなど何カ国にも渡るので、文化や制度の違いが彼らの考え方の違いとなって表れてきます。
そもそもバックグラウンドが異なるという意識があるので、同じ日本人同士ではあっても単純な優劣で他人との比較をしなくなるのが帰国生クラスの面白いところです。
クラス内での対話を通じて生徒自身が自分の強みや個性に気づき、創造的思考が動き始めるのです。

例年、忙しいスケジュールの合間を縫って、PBL型学習プログラム開発をしている本間勇人氏が特別ワークショップを行ってくれます。
今年も6月末の開講時期から定期的にお手伝いをしていただいており、生徒たちは氏の独特のアプローチに良い刺激を受けています。

小論文というのは教科知識がそれほど必要でない分、メタ認知的な視点が不可欠で、本間氏のアプローチは、生徒のメタ認知的(セルフモニタリング的)能力を開発するような効果があります。
そんな本間氏のブログ(ホンマノオト)で、帰国生たちとの対話やCanvasを利用した指導の可能性について紹介してもらいました

本間氏は、対話を置き換えたり変容させたりしながら、創造的領域にジャンプさせてしまう達人です。
生徒一人一人の背景や文脈にスポットライトを当てつつ、多様な考えを響かせ合う手腕はオーケストラの指揮者のようでもありますが、中心が固定せずにフレキシブルに変容するという点においてむしろ創発的なインプロビゼーションを楽しむ名プレイヤーというイメージかもしれません。

多様性への気づきは、自分の特性に気づくことでもあります。帰国生が自分を主張できるのは、多様性への寛容が土台にあるからなのでしょう。