首都圏模試「統一合判」保護者会トーク@順天

12月3日首都圏模試「統一合判」が行われ、私は順天でお話をしました。「併願校をどう決めるか」、「現状の成績と目標のギャップをどう埋めるか」という入試直前の関心事がテーマですが、実は目前のことを考える上でも、6年後、10年後、あるいは20年後といった中長期的な社会の変化に目を向けることが必要だという話です。

「併願校をどう決めるか」

「併願校」については、塾によっては偏差値のレンジを決めて、その偏差値の高低で志望順位を確定させようとします。これは学校の中身を知らなくても進路指導が見かけ上可能になるので、経営効率を重視する大手塾の戦略なのですが、あたかも学校の偏差値が教育の質を示しているものであるかのように見えてしまうところに問題があります。受かっても受からなくても、子どもたちが偏差値的ランクで学校の価値を考えるようになってしまうと、本当に大切なことを見る機会が奪われてしまうのです。
そこで、偏差値以外に参考にできる二つの指標をご紹介しました。一つは、首都圏模試が成績表に利用している思考コード、もう一つは、本間教育研究所が出している学校選択の指標(私立学校のスコア)です。
思考コードを参考にすれば、自分はどの思考スタイルが得意であるかが分かります。そして過去問の出題傾向を思考コードに照らし合わせれば、その学校の教育の質も見えてきます。思考コードについては、こちらのページに詳しい説明が書かれています
本間教育研究所の私立学校のスコアも、実際に私立学校を長年取材リサーチしてきた経験に基づいている指標ですから大いに参考にすべきです。本間勇人さんの出している私立学校のスコアについては、こちらをご参照ください。この指標では、4技能英語力、思考力、現代化リベラルアーツ、成長力という4つの次元から、学校の教育の質を評価しています。

「現状の成績と目標のギャップをどう埋めるか」

「目標とのギャップを埋める」には、思考コードのB2領域を攻略すること、また、その領域の問題を易しく見せるコツが有効であることをお話しました。難しい問題だということを強調したり、解法の鮮やかさを誇示したりすることは、教える側の手前味噌にすぎません。大切なことは、問題を「簡単」だと感じさせることです。同じパターンを何度も学習するのはそういった効果がありますが、もう一つの方法は、次元の異なる問題に触れることで、B2の領域の問題を相対化してしまうことです。そのような意味でC3の問題に触れられる思考力講座に参加することをお勧めしました。特に、クリエイティブシンキングに重点を置いているのが、富士見丘、工学院、聖学院、かえつ有明などで行われているもので、思考力をロジカルシンキングと捉えている学校より、異なる次元の思考が刺激される内容になっています。

以上の内容を50分でお話し、その後順天の長塚校長先生の教育講演を聞いて参りました。

順天中高 長塚校長先生の教育講演

長塚校長先生は、高大接続システム会議の委員として文科省の教育改革に様々な提言をしています。また、順天はSGH(スーパーグローバルハイスクール)として、21世紀型教育機構のメンバー校として、教育の先端を走っていますから、「さすが!」なお話の連続でした。
まず、東大の二次試験の英語の問題や企業の入社試験などを題材に、答えのない問題を考える力が求められていることに触れます。2020年を待つまでもなく、現実にそのような問題が出題されつつあることを指摘しました。この背景にはコンピューターやAIがどんどん社会に入り込んでくることが関係しています。
続いて、現状の高校生の英語レベルや目指すべき英語力の話から、欧米の大学で求められている学力が日本で育てている学力とは異なることに触れました。インプットばかりではなく、アウトプットしていく習慣を持つことが大切であることを実際の事例を元に指摘します。また、同じ高校から多くの合格者を出さないようにしているハーバード大学の、多様性を重視したアドミッションポリシーについての考え方は、合格実績を競うような日本の風潮に対するクリティカルな視点を提供していました。
探究型の学びとその評価法なども、これからの教育で目指すべき方向性で、順天中学校・高等学校でも始まっている試みであることを紹介されました。
その他約1時間にわたるお話の中には、私自身勉強になることが多々ありました。訪問するたびに順天の教育の質の高さや先進性に気づかされます。