「入試問題は学校の顔」というのは、中学受験界に古くから伝わる正に至言です。学校の先生方が1年かけて構想し、日々の授業実践で得た経験知を盛り込んだ入試問題には、出題する先生の技量だけでなく、大げさに言えば学校文化までも反映するものです。ただしそれは、出題数とか試験時間といったレベルの話ではなく、どのような思考を必要とする問題を出題するのかという観点から捉える必要があります。
英語の試験においても、どのような思考を問われるかという観点から分類することができます。GLICCでは、首都圏模試センターでも活用されている「思考コード」の考え方をベースに、英語入試問題について分析しています。
問題分析する際には、A) これまで学習してきた「知識量」を測ろうとするのか、B) 知識を組み合わせて解答に至る「論理的思考力」を見ようとするのか、あるいは C) 前提としている常識を疑い、自分なりの仮説や想像力を発揮する「批判的・創造的思考力」を見ようとするのか、という3つの軸を立てることができます。
さらに、その思考をどのように表現(アウトプット)するかというスキルを3段階に分けて考えることができます。1) 選択肢が示されてそこから選ぶ問題なのか、2) キーワードや手がかりを元に編集していく問題なのか、3) 手がかりが示されない中で自分が想起/想像した内容を解答する問題なのかという分類です。
それらを元に問題分析を行うことでその学校の入試でどのような思考力を求めているかが見えてきます。
例を示してみましょう。下の問題は、先日首都圏模試の帰国生NAVIというページでも紹介した2019年度の聖光学院の帰国生入試問題の一部です。
A pun is a joke that makes a play on words by using different meanings of a word to make the saying funny. Read the following puns and fill in each blank with one word. An example is given below.
Example: I googled "how to start a wildfire" and I got 962 ( ).
Answer: matches
1. The best way to communicate with a fish is to drop them a ( ).
2. Thanks for explaining the word "many" to me. It means a ( ).
3. I'd love to know how the Earth rotates. It would totally make my ( ).
4. A: Why are playing cards like wolves?
B: They come in ( ).
5. A: Why was the tomato all red?
B: It saw the salad ( ).
この問題のexampleでは、「山火事を引き起こす」もので、なおかつ「google で検索したときに結果を表す」単語を頭の中で探していくわけですが、あらかじめそのダブルミーニングが知識として頭にセットされているわけではないでしょう。したがって、A軸の問題ではなく、かといって答えがいくつも成立するようなC軸のタイプでもありませんから、論理的思考によって解答を導くB軸のタイプであると考えることができます。さらに、解答は一語ではあるものの自由記述のタイプですから、「B3」の問題であると分類します。
このように、一問一問について思考コード・難易度・配点を分析することで、例えば下のような出題傾向を得ることができます(配点や難易度はGLICCの予想に基づきます)
聖光学院では論理的思考を重視しつつ、知識や創造的思考が必要な問題もバランスよく出題されていることがわかります。
このような分析は入試対策という面で有効というだけではなく、入学してからの学習スタイルなども垣間見えることが多いのです。
21世紀型教育を実践する学校や、思考力テストを行っている学校では、C軸を重視しており、「主体的・対話的で深い学び」を入試に反映している学校であると言えます。