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スキル重視と「脱近代」重視 ―「21世紀型教育」について考える ①

By hiros on 2021/06/15(Tue) - 13:32

GLICCは「思考力×英語×ICT」を中心に据えた21世紀型教育ベースの学習コミュニティとして、2016年に開校しました。5年前に比べて「21世紀型教育」という言葉は広がってきましたが、人によってその捉え方は異なっているかもしれません。大きく二つに分けるならば、21世紀を生きる上で必要となるスキルを身につけるという見方と、20世紀をクリティカルに捉え返し、一人一人の個性や才能を認め合う人間関係を重視するという見方です。
 
前者は、具体的には英語力や論理的思考力、デジタルテクノロジーを駆使する力などを育成することですから、20世紀型カリキュラムの延長上であっても構築していくことが可能です、一方で、後者は、脱偏差値、批判的・創造的思考、才能や個性を伸ばす教育ですから、これまでの伝統的な学力観に対して創造的破壊を起こしていく覚悟が求められることになります。
 

慶應湘南藤沢高校 帰国生入試の変更点ーグローバルアドミッションの時代⑥

By hiros on 2021/05/12(Wed) - 11:50

慶應湘南藤沢高等部では、一般入試の募集はしていませんが、全国枠入試と呼ばれる特別入試と帰国生入試を実施しています。昨年まではそれぞれ約20名と約30名だったのですが、2022年度入試では、内進生が増えることに伴い、それぞれ若干名、20名と募集人員が縮小します。

試験内容にも変更があります。全国枠入試では学力試験がなくなり、書類と面接による選考になります。帰国生入試でも英語の筆記試験はなくなり、英語資格を提出する形式に変わります。また、国語・数学も従来の各60分から各45分に短縮され、国語は「課題型小論文」の出題になるということです。英語資格については、TOEFL iBT 70点以上、またはIELTS 5.5以上、または実用英語技能検定試験(S-CBT/CBTを含む)準一級以上を取得していることが条件です。

東大帰国生入試の小論文―グローバルアドミッションの時代⑤

By hiros on 2021/05/10(Mon) - 04:15

2021年の東大の帰国生入試の小論文問題が東大のホームページで公開されています。

東大の帰国生入試は、正式には「外国学校卒業学生特別選考 第2種」という名称で呼ばれていて、私費留学生対象の第1種と基本的には同じ問題が課されます。二つの違いは、まずは出願資格で、大雑把に言えば国籍によりどちらの入試を受験することになるかが決まります。そして筆記試験の違いとしては、課される小論文の言語です。片方の日本語小論文は1種2種ともに日本語で解答する問題ですが、もう一つの小論文は、第1種の受験生は日本語で解答、第2種の受験生は出願時に選択した言語で解答することになっています。

2021年の文科1類の問題を見てみましょう。

A(日本語で解答する問題)

「悪法も法」という法格言がある。あなたが暮らしたことがある日本以外の国での体験や観察も踏まえ、具体例を挙げ、あなたの考えを反対論も考慮しつつ述べなさい。

B(出願時に選択した日本語以外の言語で解答する問題)←1種の受験生は日本語で解答する問題

工学院大附属 Cambridge International School 認定ーグローバルアドミッションの時代④

By hiros on 2021/05/10(Mon) - 02:47

5月7日(金)にライブ配信された第28回のGLICC Weekly Eduに工学院大学附属高校の教務主任である田中歩先生が出演、同校がケンブリッジインターナショナルスクールに認定されたことを明らかにしてくれました

これまでも日本初のケンブリッジイングリッシュスクールとして高度な英語教育が知られていたのですが、今回は、インターナショナルスクールとして世界標準であることが認定されたことになります。ケンブリッジインターナショナルスクールの認定を受けているのは日本で12校ですが、1条校としては工学院が全国で初の認定です。

これにより、工学院のハイブリッドインターでの授業がIGCSEやASレベルに接続されることになります。ASレベルの先にある A2レベルをイギリスなどで提供しているオンライン教育などを組み合わせて履修することで、Cambridge や Oxfordにダイレクトにつながる条件を満たす可能性が出てきました。

IBDPのDual Routeに見る高大接続の意味―グローバルアドミッションの時代➂

By hiros on 2021/05/04(Tue) - 18:23

今回のコロナパンデミックは受験制度のあり方を考える上でも大きな事件だったと思います。今春は試験制度の変更や授業形態の変化で国内の受験生は大きな影響を受けましたが、海外の受験生もまた大きな影響を受けました。帰国入試がオンライン入試などに変更されたケースもあれば、出入国の制限から帰国そのものを断念する家庭も少なくなかったようです。
 
なかでもIBDP(国際バカロレアのディプロマプログラム)を履修していた生徒は、昨年に引き続き、今年2021年5月の最終試験でも大きな影響を受けました。IBO(IB本部)はDual Routeといって、二つの選択肢を与えました。一つは、最終試験を行うルートで、もう一つは最終試験を行わないルートです。
 
このどちらの道を選択するかは、その国の感染状況や、学校で試験を行うリスクなどを考慮し、IBOと各国の教育省とが協議して決定したようです。結果的にはExam Route(最終試験を実施するルート)を選択した国の方が多数であるようですが、それでもPaper2が中止になったり、それによって内部評価(学校での成績)の比重が変わるなどの影響は少なからずありました。しかし、一番困惑しているのはNon-Exam Route(最終試験を実施しないルート)の方に置かれた学校の生徒たちです。

「変化を生み出す力」ーグローバルアドミッションの時代②

By hiros on 2021/04/27(Tue) - 07:59

GLICCスタッフの多くは外国籍の方です。英語講師はもちろんのこと、事務スタッフもこれまで、イギリス、デンマーク、カナダの人が担当してくれました。現在は中国からの留学生(大学院生)と日本語を勉強しているイギリス人が担当してくれています。

彼ら20代から30代前半の人たちの仕事ぶりを見ていると、一つの会社に「就社」するという感覚はありません。会社は経験を積む場の一つです。ある程度経験を積んで、他に面白そうなことがあれば、どんどんチャレンジしていくという点が共通しています。

もちろん彼らとて、結婚して子育てをする頃になれば、落ち着いた生活を望み、マイホームを購入することを考えたりもするでしょう。しかし、その場所は出身国とは限らないし、その住宅を維持するために、会社に自分の時間を捧げるという生き方を選択することはあり得ません。

昭和世代の日本人にとってマイホームを持つことは、人生の目標でした。都内に一戸建てでも持てれば「勝ち組」として羨望の的となった時代もありました。しかし、経済が右肩上がりだった時代が終わり、さらにリモートワークがデフォルトになる今の時代においては、定住にこだわることは様々なリスクを抱えることだとも考えられます。

「学校」の地殻変動⁻グローバルアドミッションの時代①

By hiros on 2021/04/15(Thu) - 08:06

昨日カナダ人の先生と話をしていて驚きました。その先生の住んでいるオンタリオ州ではコロナでホームスクールを選択する人がたくさんいるというのです。ホームスクーリングがアメリカなどで広がっているという話は知っていましたが、驚いたのは、日常的な選択肢の一つとして、さらに言えば市民の当然の権利としてそれが存在しているという感覚です。



日本では学校のオンライン対応の不備が問題視されますが、「通学できないからオンライン」という学校側からの発想ではなく、「通学したくないからホームスクーリング」という、生徒や親の側からの要請にオンタリオの教育省が対応できているということに驚いたのです。



日本でも不登校に対して少しずつ寛容になってきてはいると思います。そしてそれをサポートする通信制高校の存在や、経済的に余裕のある人にとっては海外留学といった選択肢は、何がなんでも学校に通って卒業しなくてはならないといったプレッシャーを和らげてくれています。



しかし、カナダ(オンタリオ州)では届け出の手紙1枚で、すぐにでもホームスクーリングが可能になるというのです。教育が子どもにとっての権利であり、親にとっての義務であるということを端的に表している事例のように感じられます。



英語哲学対話― Philosophy 授業で LSEに合格

By hiros on 2021/04/10(Sat) - 15:18

英語哲学対話を担当しているAlex先生から、かつてPhilosophy Lessonを受講していた生徒がLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)に合格したとの連絡がありました。



哲学授業が入試にも効果がある(日本であれ海外であれ)というのは自明のことなのですが、日本では哲学授業というとまだまだ受験には役立たないというイメージが先行していますね。受験のためには無駄な勉強をやめて出題頻度の高いものを効率よく習得するという発想が根強くあります。効率を重視している時点ですでに前世紀的なのですが、これが近道だと信じて疑わないのです。しかしそのような学びが受験においてもむしろ効果が低いのは、知識をインプットする主体は人間であり、知識をずっとインプットし続けることには、限界があるということを思い起こせば明らかです。



考えてアウトプットすることも、インプットがないとやがて疲弊しますから、哲学授業もまた、考えているばかりではなく、調べたり、言い回しを工夫したりと、様々な思考スキルを使っています。このようなスキルは、受験が終わっても、成長マインドセットとして自身の性質として財産になっていくのです。



三田国際学園 中高一貫1期生 驚きの進学実績

By hiros on 2021/04/08(Thu) - 09:35

昨日三田国際の学園長である大橋先生とお話をする機会があり、今年の合格実績について一部教えていただきました。近日中に学校のホームページに掲載される予定ということですが、まず驚かされたのが海外大学への進学実績です。中学からの一貫校生で、UC デービス、UC サンタバーバラ、イギリスではマンチェスター大学、バーミンガム大などに合格が出ているそうです。さらに高校で入学した卒業生では、UCバークレーなどにも合格者が出たようで、これは、2022年度の国際生入試の受験者増加にますます拍車がかかりそうな気配です。

 
また、国内の大学でも国立の医学部医学科を始め、早慶上理GMARCHに90名近い合格、特に理系学部において良い実績が出ているということです。三田国際学園として出発した初年度は、現在に比べると決して偏差値の高い生徒がたくさん集まる学校ではなかったにも関わらず、このような結果が出せたことは、これまで学校全体でやってきたことが正しかったという自信にもつながったと大橋先生は語っていました。


早稲田大学帰国生入試について

By hiros on 2021/04/07(Wed) - 00:16

どの大学でも帰国生大学入試は縮小傾向にあり、総合型選抜(AO入試)等との統合が進んでいます。海外の駐在員の若年化が進み、高校生の子どもを持つ親が少なくなっていることが原因の一つです。
早稲田大学でも「帰国生入試」という名称で試験を実施する学部は、今年から「法、教育、商、理工系3学部」の合計6学部となっています。「外国学生のための学部入試」に比べるとずいぶん寂しい感じがします。

要は、出願が増えている外国学生入試に帰国生入試が統合されているというわけです。
 
帰国生が文学部や文化構想を目指す場合、帰国生入試では出願できませんが、外国学生入試を受験するという方法が残されています。ただし、その場合、日本留学試験もしくは日本語能力試験を受験しておくことが必須となり、事実上2022年度入学の出願には間に合いません。2023年度4月以降の入学を目指す方は、その方法も念頭に置いて準備をしておくとよいでしょう。