これまで学校や授業の話を中心にしてきましたが、今回はスウェーデンでの日常生活について書かせていただきます。(このコンテンツの続きを見るにはユーザー登録(無料)が必要です。)
おそらく最初に驚くのが人口の少なさです。スウェーデンは国全体で東京都の人口に満たないほどで満員電車にはとても縁のない国です。どこへ行っても並ぶことはほとんどないのでその点ストレスも溜まりにくいでしょう。また、スウェーデン人はシャイな方々が多いので突然話しかけられたりもしませんし、静かで時間の経過がとてもゆっくりしています。とはいえ見知らぬ土地で、話す言葉も違えば今まで生きてきた文化も違うので、ただ優雅な暮らしができるわけではありません。文化が違うということは、常識が違うともいえるのではないでしょうか。これはスウェーデンに限らずどの国へ行っても感じることで、例えば日本人にとってバレンタインは女の子が男の子にチョコをプレゼントするのが常識ですが海外では逆に男の子が女の子にお花などをプレゼントする日というのが常識です。肉団子は和風のソースをかけてほくほくのご飯と頂く家庭が多い日本に比べてスウェーデンではジャムを付けてマッシュドポテトを添えたものがミートボールです(IKEAで食べたことのある方は思い出していただけたらと思います)。電車が定時に来ることなんてほとんどありません。むしろ定時に来たら驚きますし、あらかじめ遅めに行くので逃したりします。
ここまでで何が言いたいかといいますと、スウェーデンに限らず海外へ移り住むときは「きっとこうだろう」とか「こうであるべき」という感覚は置いていきましょう。そこに縛られると必要以上に苦労するのではないかと思います。と言われてもいざというときは驚いてしまうものなので、スウェーデン特有の文化をご紹介します。主に3つ;男女平等社会、フィーカ、サンボです。ただし、私が住んでいたのはマルメという第三の都市と呼ばれる場所で、2年しか滞在していなかったので一部感じ方が違う場合もあるとは思いますがご容赦ください。
まず、男女平等というのはその通りで、道路工事現場に女性がいるのは日常的な光景ですし、逆に平日の昼間にお父さんがベビーカーを押したり子供たちと遊んだりしている光景もよく見かけます。どちらかが力仕事を担うとか、どちらかが家事をするとかそういう考え方があまりないようです。このことから自分が主婦であると公言してしまうとあまりいい目で見られないことがあります。男女問わず仕事を持っているのが自然で、主婦と言われると日本で男性が仕事についていないのと同じようなイメージを持つ人がいるようです。
次にフィーカです。日本語で簡単にいうとお菓子の時間です。お昼休憩のあと3時ごろにコーヒーを飲みながらシナモンロールを食べる習慣があります。学校ではありませんでしたが会社では必ずと言っていいほどあると聞いたことがあります。また、どのカフェにいってもほぼ必ずシナモンロールは置いてありました。嬉しいことにスウェーデンではあまり長時間働く人はいませんでした。日本のように夜遅くに帰宅する人はあまりいません。例えば、会社に勤めていても通常年に最低25日以上の有給休暇が保証されています。この休暇をまとめて夏休みにまとめて取る人が多いため、夏休み中はなにをしようとしても連絡がつかないということが何度かありました。学校に書類をお願いしてもほぼ確実に休みが明けるまで返事がありません。人が働いていないと不便なこともありますが、働きすぎもまたよくないと思います。日本も少し見習いたいです。
最後にサンボです。これは結婚という形に縛られないスウェーデン人ならではの関係で、婚姻届けを出さずに同居しているペアのことを言います。また、私の友人にも何組かいますが、同性愛者に対しての理解が進んでいるスウェーデンでは関係をオープンにする人が多く、そういった場合でもサンボといって自身のパートナーを紹介することがあります。誤解のないように説明しますが、仲が悪いとか結婚の前段階とかそういうことではなく、婚姻届けを出さないある種の“夫婦”であって私の教わっていた先生ももう10年以上もサンボの関係だと言っていました。「私のサンボです」と言われたら、夫や妻と同じような意味だと思ってください。
これ以外にも日本とは違うなと感じる部分が何点かあるかと思います。また、気を付けていただきたいのは、全員が英語を話せるわけではないということです。若い子供たちは多くが英語教育を受けているためある程度話せますが、お年寄りの方やスーパーで働いている方など一部の方々は話せない場合があるので、英語に頼りすぎるのはやめたほうがいいかと思います。また、人によっては日本人に対してあまりいいイメージを持っていないことがあります。お年寄りに多いのですが、厳しい視線を向けられることもあります。一度経験したのが、カフェで隣の方が書類を床に落としてしまったとき拾ってあげようとするとすごい表情で「触るな」と言われました。別の日には、体調が悪くて座り込んでいるとき「ドラッグ?」と警察に聞かれたこともあります。もちろんそういう人たちばかりではありません。実はスウェーデンには日本の文化が好きだと言ってくれる人も多くいます。漫画や食にとどまらず、忍者など、そもそも日本人の少ないスウェーデンでは日本人だというだけで興味を持ってくれる人がいます。そういう人たちと話していると外から見た日本がどういう国なのか、外国人にはどう映っているのかを知ることができます。海外へ行ってよかったと思えることの一つです。
最後に、ご想像の通りスウェーデンは寒いです。海や川が凍ります。外に出るときは雪だるまみたいにまんまるな恰好をします。でも室内はセントラルヒーティングで暖かく、半袖で過ごせるほどです。私の住んでいたマルメはスウェーデンの中でも南の先端なので首都のストックホルムはもっと寒いかもしれませんが、正直そこまで構えるほどの寒さでもなかった印象です。北海道のほうが寒いです。ちなみにユニクロは見かけたことがないのでヒートテックはあると便利だと思います。