西野チューターの洋書紹介

西野チューターは、アメリカに2年、オマーンに3年半暮らし、海外インター校から日本の中高一貫校に編入し、東京大学文科Ⅲ類に現役合格を果たしました。いったいどんな勉強をしたのか、勉強法について尋ねると意外にも受験勉強をそれほど懸命にやったというわけでもなく、むしろ洋書を読むなど、楽しみながら学んでいたということです。西野チューターが大好きだという洋書を少し紹介してもらうことにしました。 

こんにちは。
私は本が大好きで、特に洋書をたくさん読んでいるのでお勧めのものをいくつか紹介したいと思います。

Title:        The Lightning Thief
Author:        Rick Riordan
Year:        2005
Series:        Percy Jackson and the Olympians
Pages:        377
Publisher:    Disney Hyperion
Lexile measure:    740

あらすじ:
ニューヨークに住む12歳の少年パーシーは集中力がなく、すぐにトラブルに巻き込まれる問題児ではあるが、母親とともに暮らす普通の少年だった。しかしある日親友から自分がギリシャ神話の神の一人を父親に持つ「半神」だと知らされ生活は一変する。数学の先生に襲われ、自らは怪物に追われる中、母親は連れ去られてしまう。その頃、神々が暮らすオリュンポスではゼウスの稲妻が盗まれパーシーに疑いの目が向けられる…

感想:
とにかく面白かったです!ネイティブの人だと小学生の時に読む人が多い本で、内容が幼稚なのではないかと不安だったのですがそんなことは全くありませんでした。ギリシャ神話の神々が登場するだけあって、このシリーズを読めばギリシャ神話の主なストーリーのだいたいの流れや登場人物についての知識は身につくはずです。私は大学で美術論の授業を履修しているのですが、このシリーズを読んだ経験がギリシャ神話に基づく西洋絵画の解釈に役立ちました。
この本は私が中1(Grade 7)の時にオマーンに引っ越してから初めて自主的に読んだ英語の本です。もともと私は読書が大好きで、オマーンに引っ越してしばらくは慣れ親しんだ日本語の本(実はオマーンの隣国UAEの都市ドバイには紀伊国屋があり、そこでは日本語の本も売っていたのです!)を読んでいたのですが2年ほどたった頃に英語の本を読みたいと思うようになり、ファンタジーが好きだったこともあってこの本を選びました。
この本の一番の魅力はRiordanのユーモアあふれる文体です。この本の各チャプターにはタイトルがつけられているのですがそれぞれが独特で思わず笑ってしまいます。
また、子供向けの本なのでギリシャ神話のあらすじが分からないと理解ができないということも、英語が難しすぎるということも全くありません。私には妹と弟がいるのですが、小学生の妹、中学生の弟、高校生の私の三人で楽しむことができました。使われる英語は簡単なので、洋書を読むのが初めて、という方ぜひ手に取ってみてください。
ちなみにこの本の作者であるRick Riordanはギリシャ神話に基づくこのシリーズのほかにもローマ神話に基づくシリーズ、北欧神話に基づくシリーズ、エジプト神話に基づくシリーズ、ギリシャ神話の太陽の神アポロを主人公としたシリーズも出しており、特にローマ神話に基づくシリーズはこのシリーズの続編となっているのでこちらもぜひ読んでみてください。

 

Title:        Looking for Alaska
Author:        John Green
Year:        2005
Pages:        256
Publisher:    Speak
Lexile measure:    930

あらすじ:何も起こらない生活に飽き飽きした少年 “Pudge”はフランスの詩人ラブレーの言う “Great Perhaps”を求めてボーディングスクールに入学した。そこで彼は、ルームメートの “Colonel”, そして彼の友達であるアラスカ・ヤングなどの個性あふれる友人たちに出会い充実した高校生活を送っていた。アラスカの危なっかしい魅力に惹かれるPudgeだったがある日を境に状況は一変する…

感想:
この本の作者グリーンは“The Fault in Our Stars” や“Paper Towns”等の映画化もされた大人気小説の作家であり、この本“Looking for Alaska”は彼のデビュー作にしてマイケル・L・プリンツ賞受賞作品です。

ジョン・グリーンの本だけあって、この本にはいろいろと考えさせられました。主人公Pudgeは有名人の残した最後の言葉を集めることを趣味としているため本書でもそれらがたびたび登場します。その中でもっともストーリーにおいて大きな役割を果たしかつ私の印象に残っているものが2つあるのでそれらを紹介します。

1つ目が南米の革命家シモン・ボリバルの最後の言葉(と言われている言葉)“Damn it! How do I ever get out of this labyrinth?”です。これは人生の諸問題をlabyrinth(迷宮)に例えたうえでそれらから抜け出せないもどかしさを表現しています。このもどかしさは誰もが経験したことがあるでしょう。私は何かうまく行かないことがあったらこの言葉を思い出すようにしています。南米諸国を独立に導くという歴史を揺るがすような偉大な業績を残した人物でさえ人生の最後の瞬間までもどかしさを感じていたのです。うまく行かないことがあるのは当たり前だと思いなおすようにしています。

2つ目がフランスルネサンスの詩人フランシス・ラブレーの “I go to seek a great perhaps.”です。主人公Pudgeはこの言葉をもとにボーディングスクールへの入学を決意するなど、この言葉を人生のモットーとしているため本の中でもたびたび登場します。私はこの言葉にハッとさせられました。人生の“perhaps”(もしかして)は自ら“seek”(探し求める)ものなのです。受動的に生きているだけでは人生の「もしかしたら…」を逃してしまいます。私はそれまで自分から積極的に動くことが少ない人間で、何か自分の興味があることがあっても「ま、いっか」と手を付けずにいたり、「どうせ出来るはずがない」と最初からあきらめたりしてしまっていました。しかしそうすることによって自分のチャンスを逃していたかもしれないのです。この言葉に出会い、これからは常にチャレンジ精神をもって様々な経験に飛び込み、新しい人々、考えに出会い人生を豊かなものにしていきたいと思うようになりました。

この本には、ジョン・グリーンの本というだけあっていろいろと考えさせられました。また、この本を読んで私は名言に興味を持つようになりました。
この本はもちろん、この作家の他の本もぜひ読んでみてください。