小学校英語教科化と大学入試

先日、上智大学言語教育研究センター特任教授の吉田研作先生に英語教育についてのお話を伺って来ました。「どうなる!?小学校英語教科化による今後の英語教育!」と題した記事として首都圏模試センターのホームページに掲載されています

4技能英語の民間試験が大学入試の共通テストに導入されることが決まり、小学校5年生からは英語が「教科」となることで小学生から高校生まで英語学習への関心が高まっています。4技能の重要性が主張される一方で、会話などのコミュニケーションに注目が集まり過ぎ、文法やリーディングといったアカデミックなスキルが軽視されることを危険視する主張もあちこちで耳にします。

英語学習の方法について、万人にとっての正解というものはありません。しかし、学習者のバックグラウンドや目標に応じた効果的な学び方はあるはずで、様々な見解の中から自分(子ども)に合ったものをどう選択していくかということになるのでしょう。

4技能英語を強調することが文法の軽視になるかというと、そういうことではありません。インタビューの中で吉田教授もお話されていますが、現実の事例から「帰納的」に文の規則に気づいていくという流れが無理のない学び方だということです。従来型の文法知識中心になるか、4技能(読む・書く・聞く・話す)を活かす方向で文法を活用するかというのは、英語学習にかけられる時間との兼ね合いということになります。

そのように考えると小学生からの英語学習ということの意味がはっきりして来ます。つまり、従来型文法を前倒しするようなやり方やパターンプラクティスではなく、多くの英語表現に接することを通して、中学生以降の文法学習で「気づき」が得られるように、小学生のうちから「種」を撒いておくことが大切だということです。

実はこのような学び方をめぐる議論は、英語だけではなく、他教科の勉強や授業スタイルとも密接に関係しています。知識を早急に与えることで、知識を得ること自体が目的と化してしまい、ともすると探究心を持つ機会が奪われてしまうとしたらそれは問題です。

21世紀型教育を掲げるいくつかの学校がPBL型の授業を行っていたり、あるいは最近中学受験において、新タイプの入試が広がっている背景には、このような「学び方」に対する親の意識の高まりがあるのです。

生涯学び続けていく時代に、知識を吸収するだけの受動的な態度ではまずいことは学習指導要領の方向性を見ても明らかでしょう。英語学習のみならず、学び方を考える上でも首都圏模試センターのインタビュー記事は様々な示唆を与えてくれると言えそうです。