英検の対策をしてほしいというご要望は多く、GLICCでは年3回の講習の際に英検対策講座を開講しています。無学年制ではありますが、帰国の小学生と一般の中高生とではクラスを分けています。年上の生徒のプライドに配慮するということ以上に、むしろ学び方が異なるということが理由です。
例えば、帰国の小学生で準1級を目指すほど英語力が高い子どもでも、文法的な体系は頭に入っていない場合がほとんどです。彼らは英語環境でサバイバルしてきた経験と感覚から、「こうは言わない」「このフレーズはなんとなく耳にしたことがある」などと判断しています。そういう小学生に短期間で文法を教え込もうとしたら拒絶反応が起きてしまうでしょう。
単語の覚え方にしても、いちいち日本語に変換していないということがあります。対訳式の単語帳を渡して覚えさせようとしても、逆に日本語が負担になることすらあります(もちろん対訳によって日本語の勉強にもなるという考えもありますが、ここでは短期の英検対策に話を絞ります)。
一方で、準1級を目指す高校生であれば、英語が得意な生徒ですから、文法はほとんど問題がありません。したがって、解答に至る道筋はリーディングにしてもライティングにしても文法的な説明をベースにして進むことになるでしょう。
そういうわけで、中高生に向けた講座と帰国の小学生に向けたものでは、目標級が同じでもアプローチが大きく異なってくるのです。
では、帰国生の小学生にはどういう指導をするのが良いのか、特に準1級のレベルで考えてみましょう。ライティングはフォーマットさえ与えれば難なくこなすでしょう。リスニングも出題のパターンに慣れれば得点源となるはずです。
上述の2つの領域で十分な点が取れることを前提とした上で合否の鍵を握るのは何と言ってもボキャブラリーです。リーディングは大人向けの内容であることが多く、小学生が短期間で対策するには得点しづらいパートです。このパートを得意にするには、普段からニュースなどを題材にディスカッションをしておくなどといった長期的な対策が必要になるでしょう。
一方、ボキャブラリーの方は、短期間に頭にインプットすることが可能です。ただ、先述の通り日本語対訳式は帰国生にはあまり向きません。それよりも英語のシソーラス(類義語)を与えていくのが効果的です。synonymをいくつか並べていくことで単語の概念マップのようなものを形成していくのです。それと例文を与えることも重要です。これも日本の辞書より英英辞典(特にCollinsがおすすめ)に出ているものが良いようです。日本語の訳語に頼ることができないので、単語のエッセンスを十分に伝えてくれる例文が大切になるのです。