東大帰国生入試の小論文―グローバルアドミッションの時代⑤
2021年の東大の帰国生入試の小論文問題が東大のホームページで公開されています。
東大の帰国生入試は、正式には「外国学校卒業学生特別選考 第2種」という名称で呼ばれていて、私費留学生対象の第1種と基本的には同じ問題が課されます。二つの違いは、まずは出願資格で、大雑把に言えば国籍によりどちらの入試を受験することになるかが決まります。そして筆記試験の違いとしては、課される小論文の言語です。片方の日本語小論文は1種2種ともに日本語で解答する問題ですが、もう一つの小論文は、第1種の受験生は日本語で解答、第2種の受験生は出願時に選択した言語で解答することになっています。
2021年の文科1類の問題を見てみましょう。
「悪法も法」という法格言がある。あなたが暮らしたことがある日本以外の国での体験や観察も踏まえ、具体例を挙げ、あなたの考えを反対論も考慮しつつ述べなさい。
工学院大附属 Cambridge International School 認定ーグローバルアドミッションの時代④
これまでも日本初のケンブリッジイングリッシュスクールとして高度な英語教育が知られていたのですが、今回は、インターナショナルスクールとして世界標準であることが認定されたことになります。ケンブリッジインターナショナルスクールの認定を受けているのは日本で12校ですが、1条校としては工学院が全国で初の認定です。
これにより、工学院のハイブリッドインターでの授業がIGCSEやASレベルに接続されることになります。ASレベルの先にある A2レベルをイギリスなどで提供しているオンライン教育などを組み合わせて履修することで、Cambridge や Oxfordにダイレクトにつながる条件を満たす可能性が出てきました。
IBDPのDual Routeに見る高大接続の意味―グローバルアドミッションの時代➂
今回のコロナパンデミックは受験制度のあり方を考える上でも大きな事件だったと思います。今春は試験制度の変更や授業形態の変化で国内の受験生は大きな影響を受けましたが、海外の受験生もまた大きな影響を受けました。帰国入試がオンライン入試などに変更されたケースもあれば、出入国の制限から帰国そのものを断念する家庭も少なくなかったようです。
なかでもIBDP(国際バカロレアのディプロマプログラム)を履修していた生徒は、昨年に引き続き、今年2021年5月の最終試験でも大きな影響を受けました。IBO(IB本部)はDual Routeといって、二つの選択肢を与えました。一つは、最終試験を行うルートで、もう一つは最終試験を行わないルートです。
このどちらの道を選択するかは、その国の感染状況や、学校で試験を行うリスクなどを考慮し、IBOと各国の教育省とが協議して決定したようです。結果的にはExam Route(最終試験を実施するルート)を選択した国の方が多数であるようですが、それでもPaper2が中止になったり、それによって内部評価(学校での成績)の比重が変わるなどの影響は少なからずありました。しかし、一番困惑しているのはNon-Exam Route(最終試験を実施しないルート)の方に置かれた学校の生徒たちです。
「変化を生み出す力」ーグローバルアドミッションの時代②
GLICCスタッフの多くは外国籍の方です。英語講師はもちろんのこと、事務スタッフもこれまで、イギリス、デンマーク、カナダの人が担当してくれました。現在は中国からの留学生(大学院生)と日本語を勉強しているイギリス人が担当してくれています。
彼ら20代から30代前半の人たちの仕事ぶりを見ていると、一つの会社に「就社」するという感覚はありません。会社は経験を積む場の一つです。ある程度経験を積んで、他に面白そうなことがあれば、どんどんチャレンジしていくという点が共通しています。
もちろん彼らとて、結婚して子育てをする頃になれば、落ち着いた生活を望み、マイホームを購入することを考えたりもするでしょう。しかし、その場所は出身国とは限らないし、その住宅を維持するために、会社に自分の時間を捧げるという生き方を選択することはあり得ません。
昭和世代の日本人にとってマイホームを持つことは、人生の目標でした。都内に一戸建てでも持てれば「勝ち組」として羨望の的となった時代もありました。しかし、経済が右肩上がりだった時代が終わり、さらにリモートワークがデフォルトになる今の時代においては、定住にこだわることは様々なリスクを抱えることだとも考えられます。
「学校」の地殻変動⁻グローバルアドミッションの時代①
昨日カナダ人の先生と話をしていて驚きました。その先生の住んでいるオンタリオ州ではコロナでホームスクールを選択する人がたくさんいるというのです。ホームスクーリングがアメリカなどで広がっているという話は知っていましたが、驚いたのは、日常的な選択肢の一つとして、さらに言えば市民の当然の権利としてそれが存在しているという感覚です。
日本では学校のオンライン対応の不備が問題視されますが、「通学できないからオンライン」という学校側からの発想ではなく、「通学したくないからホームスクーリング」という、生徒や親の側からの要請にオンタリオの教育省が対応できているということに驚いたのです。
日本でも不登校に対して少しずつ寛容になってきてはいると思います。そしてそれをサポートする通信制高校の存在や、経済的に余裕のある人にとっては海外留学といった選択肢は、何がなんでも学校に通って卒業しなくてはならないといったプレッシャーを和らげてくれています。
しかし、カナダ(オンタリオ州)では届け出の手紙1枚で、すぐにでもホームスクーリングが可能になるというのです。教育が子どもにとっての権利であり、親にとっての義務であるということを端的に表している事例のように感じられます。
英語哲学対話― Philosophy 授業で LSEに合格
英語哲学対話を担当しているAlex先生から、かつてPhilosophy Lessonを受講していた生徒がLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)に合格したとの連絡がありました。
哲学授業が入試にも効果がある(日本であれ海外であれ)というのは自明のことなのですが、日本では哲学授業というとまだまだ受験には役立たないというイメージが先行していますね。受験のためには無駄な勉強をやめて出題頻度の高いものを効率よく習得するという発想が根強くあります。効率を重視している時点ですでに前世紀的なのですが、これが近道だと信じて疑わないのです。しかしそのような学びが受験においてもむしろ効果が低いのは、知識をインプットする主体は人間であり、知識をずっとインプットし続けることには、限界があるということを思い起こせば明らかです。
考えてアウトプットすることも、インプットがないとやがて疲弊しますから、哲学授業もまた、考えているばかりではなく、調べたり、言い回しを工夫したりと、様々な思考スキルを使っています。このようなスキルは、受験が終わっても、成長マインドセットとして自身の性質として財産になっていくのです。
三田国際学園 中高一貫1期生 驚きの進学実績
昨日三田国際の学園長である大橋先生とお話をする機会があり、今年の合格実績について一部教えていただきました。近日中に学校のホームページに掲載される予定ということですが、まず驚かされたのが海外大学への進学実績です。中学からの一貫校生で、UC デービス、UC サンタバーバラ、イギリスではマンチェスター大学、バーミンガム大などに合格が出ているそうです。さらに高校で入学した卒業生では、UCバークレーなどにも合格者が出たようで、これは、2022年度の国際生入試の受験者増加にますます拍車がかかりそうな気配です。
また、国内の大学でも国立の医学部医学科を始め、早慶上理GMARCHに90名近い合格、特に理系学部において良い実績が出ているということです。三田国際学園として出発した初年度は、現在に比べると決して偏差値の高い生徒がたくさん集まる学校ではなかったにも関わらず、このような結果が出せたことは、これまで学校全体でやってきたことが正しかったという自信にもつながったと大橋先生は語っていました。
早稲田大学帰国生入試について
どの大学でも帰国生大学入試は縮小傾向にあり、総合型選抜(AO入試)等との統合が進んでいます。海外の駐在員の若年化が進み、高校生の子どもを持つ親が少なくなっていることが原因の一つです。
早稲田大学でも「帰国生入試」という名称で試験を実施する学部は、今年から「法、教育、商、理工系3学部」の合計6学部となっています。「外国学生のための学部入試」に比べるとずいぶん寂しい感じがします。
要は、出願が増えている外国学生入試に帰国生入試が統合されているというわけです。
帰国生が文学部や文化構想を目指す場合、帰国生入試では出願できませんが、外国学生入試を受験するという方法が残されています。ただし、その場合、日本留学試験もしくは日本語能力試験を受験しておくことが必須となり、事実上2022年度入学の出願には間に合いません。2023年度4月以降の入学を目指す方は、その方法も念頭に置いて準備をしておくとよいでしょう。
「海外帰国生のためのオンライン進学説明会」トークメモ
3月21日(日)に実施する「オンライン説明会」のトークメモです。中学入試・中高編入・高校入試・大学入試の順に話をしていく予定ですが、相互に関係する内容もあるので、多少入れ替えがあるかもしれません。
中学入試
- 帰国生入試の受験資格、国際生入試とは?
- 海外の学習環境と同じ学習環境を考える
- 一般入試での難関中学受験準備
- 人気沸騰の三田国際に合格する英語力(その他英語入試の人気校について)
- 「英語哲学対話」の授業紹介
中高編入
- 増加するIB校(MYP/DP)について
- 21世紀型教育を進めている学校
- 英語取り出しクラスや英語イマージョンを実践している学校
- 編入試験で注意するべきポイント
高校入試
京都大学文学部に一般受験で合格!ある帰国生の話
本日3月10日は東京大学や京都大学の前期試験の発表日でした。私が放課後の大学受験講習をサポートしている都内のある私立高校からは京都大学を受験した生徒がいて、文学部に見事合格したとの連絡がありました。
この生徒は、6年前に帰国生入試でこの私立学校に入学しました。寡黙で一人で過ごすことの多い生徒でしたが、知的好奇心の旺盛な生徒で、高2以降に行われた現代文の大学受験講習では、文章に関連した「脱線」になると視線をこちらにぐっと向けてきていたことが印象に残っています。