英語外部試験が日本の教育に突きつけたもの

このところ大学入試改革に関連して英語の外部試験の扱いをどうするかという議論が盛んです。

センター試験に代わって2020年度から実施される大学入試新共通テストでは、民間の英語試験を活用していくことが決まっています。ケンブリッジ英語検定、TOEFL、TOEIC、GTEC、TEAP、TEAP CBT、英検、IELTSの8種類が認定されました。
ただし、移行措置として2023年まではマークシートとの併用となり、受験者は両方のテストを受けることになります。このような状況の中、東京大学は先月、公正な比較が難しいという理由で民間英語試験を合否判定には使わないと発表しました。

そもそも、民間の英語試験を活用していくことは、4技能の英語力を測る目的で開始された議論でした。スピーキングとライティングを十分に測れないマーク方式に代わる試験を検討する中で、4技能型の英語試験をゼロから開発するというのは非現実的ですから、すでに使われているものを活用していこうということだったわけです。
ところが、民間試験は、各団体の測定する英語力がそれぞれ異なっています。いくらCEFRなどの統一基準を使ったとしても、受けるテストによる違いを標準化することはできません。東大が民間試験を合否判定に使わないと発表した背景にはそのような事情があります。

しかしもっと厄介な問題は、学習指導要領との整合性でしょう。TOEFLやIELTSといった世界基準で使われているテストを学習指導要領に閉じこめることはできません。民間の外部試験を利用するということは、一部とはいえ、指導要領の範囲を逸脱する領域が出てくる可能性があるわけです。日本を代表する東京大学が外部試験利用を推進すると学習指導要領における英語教育の信頼性が揺らぐことになりかねません。英語外部試験の議論は、学習指導要領という制約に門戸開放を要求するかのような様相を帯びてきました。

それにしても、受験生はいい迷惑です。外部試験を受けるのは必須ですから、受けさせるだけ受けさせておいて合否判定には使われないという、本当に受験生を馬鹿にした事態になる可能性すらあります。民間の外部試験団体への利益誘導だったというような話にだけはして欲しくありません。