【帰国生の学校選び】クラス&サポート編

帰国生の受け入れ校といっても、その中身・サポートは学校によって様々です。

英語の取り出し授業を帰国生教育の特色とする学校もあれば、日本語サポートや異文化適応(いわゆる逆カルチャーショックへの対応)をメインとする学校もあります。帰国生だからといって英語が得意な生徒ばかりではありませんから、帰国生のどのような特性に留意して受け入れをしている学校なのかということは保護者にとって気になる点です。今回は、帰国生教育のどのような側面を学校選びの指標とするのかについて考えてみます。なお、帰国生入試(アドミッション)のあり方を中心に学校選びをすることについては、過去に書いたこちらの記事を参照ください

まず、帰国生入試を行っていても、英語の取り出し授業や特別なサポート体制がないという学校があります。帰国生だからといって特別扱いはしないというポリシーはそれはそれで一つの考え方で、特に伝統的進学校に多く見られます。海外の体験を否定はしないけれど、早く日本のシステムに慣れましょうというスタンスです。帰国生というよりも日本人というアイデンティテイが優先されるので、従来型日本社会の中で適応していきたいという人にとっては悪くない学校です。

次に、英語取り出しクラスを用意し、英語の得意な帰国生を優遇する学校があります。帰国生に人気の学校の多くはこのタイプで、頌栄女子渋谷教育学園グループ洗足学園などがその例です。こういった英語重視の帰国生受け入れ方針と、その英語クラスをネイティブの先生がすべて担当するという点が人気の元となっています。

こういった学校の中でも、高校生くらいになると取り出し授業がなくなり、習熟度クラスの中に組み込まれていく学校と、高3生までネイティブによる授業が選択可能になっている学校とがあります。最近多くの帰国生を集めているかえつ有明では、3年連続して東大に現役合格者を輩出していますが、いずれの生徒もネイティブの先生が担当する「Honorsクラス」を受講していたということです。ですから、本格的な英語力さえ付いていれば、国内の大学受験においてもいわゆる「受験英語指導」は必要ないのかもしれません。

最近では、英語の授業を取り出すだけでなく、帰国生・国際生のコースを別に用意し、英語以外の教科を英語で教えるスタイルを取る学校も増えています。インターナショナルコースで近年急速に人気を集めているのが、三田国際学園です。ほとんどすべての科目を英語で教えるということで、特に2017年度中学入試においては、英検準1級保持の受験者でも涙を飲んだという話が漏れ伝わるほどの難関校となっています。もう一つ、ハイブリッドインターコースを設置した工学院大学附属も同様のコンセプトを掲げている学校として注目されています。いずれの学校もグローバル高大接続を推進する新しいタイプの帰国生受け入れ校です。

外部のプログラムを移植することで、インターナショナルスクールと同質のカリキュラムを実現している一条校としては、東京学芸大国際中等教育学校があります。国際バカロレアのMYP(中1から高1)とDP(高2・高3)の一貫カリキュラムで、日本語で学ぶ科目を一部に採り入れたIB(日本版IB)を特色としています。国際バカロレアと同様に、世界標準の大学統一試験資格となるブリティッシュコロンビア州のカリキュラムを、日本の高校の履修単位と統合させた文化学園大学杉並は、IBよりも幅広い層が学んでいける画期的なインターナショナルスクールだということができます。2018年度からは共学になることが発表されていますので、今後はより多くの生徒が選択する学校となっていくはずです。

帰国生の語学力だけではなく、アイデンティティという面でもケアをしている学校としては、国際学級を設けている成蹊啓明学園、また、帰国生の専門家による放課後日本語サポートを行っている富士見丘大妻中野などがあります。富士見丘や大妻中野は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)の指定を受け、海外入試も行うなど、ここ数年急速に帰国生からの注目度が高まっています。

今年から帰国生入試を始める八雲学園は、共学化やラウンドスクエアへの加盟などが、国内の中学入試情報で大きく取り上げられており、2018年度入試では帰国生からも大いに注目されると予想されます。

もともと偏差値的評価の馴染まない帰国生入試ですが、塾の発信する情報はどうしても入学難易度や合格実績的など過去の数値データになりがちです。しかし、各校の帰国生教育の中身を検証していくことこそ、海外での学びを経験してきた帰国生にとっては重要なことであるはずです。GLICCでは、できるだけこういった学校の教育内容を発信していくように努めていきます。