東京私立中学合同相談会@国際フォーラムー新しい中学入試の時代

合同相談会は、私立中学の人気を見る上で大いに参考になるイベントです。中でも東京私立中高協会が主催するこの相談会は私立中学が集まるものとしては最大規模ですから、私も毎年訪れるようにしています。今年は例年よりも来場者数が多く、全体的に私立中人気が高まりを見せていることが伺えました。ブースに列ができ、カウンターだけでは対応が間に合わず、ブース脇で応援の先生が立って対応するほど盛況な学校があちこちで見られました。

全体の来場者数が例年よりも多かったため、どこの学校も昨年より訪問者が増えているように見受けましたが、それでもざっと見渡しただけで、人気の学校は一目瞭然です。

ブースに大勢の人が集まっていた学校は、次のようにまとめることができると思います。

  1. 果敢に学校改革を進め、新しい入試を導入している学校。ここには共学化などの制度面の改革や、授業の改革に学校全体として取り組んでいるところなども含まれます。
  2. 大学付属校など、スポーツや自分の好きなことに集中できる学校。また、全国大会レベルの部活動があったり、推薦枠を豊富に持っている学校などは付属校でなくとも人気を上げているようです。
  3. 帰国生や国際生の受け入れに積極的で、英語を強みとして打ち出している学校。海外大学進学を視野に入れた進路指導体制が取られている点なども魅力となっています。

近年、スマホなどの普及により、保護者はSNSや学校ホームページから直接学校情報を得ている割合が高くなっており、大手塾や模試会社やマスメディアが発信する偏差値や大学進学実績といった量的データがずいぶん相対化されていると感じます。

学校ホームページやFacebookのページを見れば、その学校の教育活動が分かり、従来の数字データには表れてこない学校特有の雰囲気が把みやすくなりました。相談会はそういう学校の印象を確認する場でもあるわけです。いくらホームページで「アクティブラーニング」だとか「主体的な学び」などと書かれていても、ブースで話している先生が大学合格実績の話ばかりしているのなら、その学校は従来通りの20世紀型教育校だということになるでしょう。

もちろん21世紀においても大学進学は大切で、そのための準備教育は求められていくことに変わりはありませんが、それが大学間の序列をベースにした「高校の業績」であるかのように語られる環境にいると、結果で良し悪しを判断する「fixed mindset」を助長し、成長を促す「growth mindset」を生徒の中に育てることが難しくなります。「良い大学に入ったからこれからはそんなに努力をしなくてもいいや」と考えたり、逆に「良い大学に入らないと周囲の人に評価されないのではないか」という不安を抱いたりしてしまうのです。

学校への憧れや志望順位はあって当然です。しかしそれは偏差値の違いだけによる必要はありません。量的データに加えて質的データを蓄積していく必要があります。最初はホームページを見た印象といった程度のものが合同相談会や学校説明会に足を運んでいくたびに質的データのカテゴリーとなってデータベース化されていくことでしょう。

今週土曜日(5月27日)には、21世紀型の大学進学準備教育を考えるイベントが明海大学(新浦安)で行われます。中学入試を控えている人にとっては、入口ではなく出口の話となり、遠い先のことに感じられるでしょうが、今私立中高が行っているアドミッションポリシーやカリキュラムポリシーの変更は、実はディプロマポリシーと繋がっているのです。このようなイベントに足を運ぶことは、学校選びの指標(=質的データ)の蓄積に一役買うかもしれません。