「グローバル教育3.0」時代の学校モデル

2月18日に工学院大学で実施された「新中学入試セミナー」前半部の模様が、​21世紀型教育機構のホームページに掲載されています

「グローバル教育3.0」があるからには、「1.0」と「2.0」が必要です。それを1枚にまとめているのが下記の表です。

私立学校研究 (c) ホンマノオト より

私なりの時代感覚でお話すると、高度経済成長の豊かさを背景に国際化が進み、海外の大学で学ぶことが珍しいことでもなくなった時代、それがグローバル教育1.0です。
明治以前から海を渡った先人もいますが、ひとまず普通の感覚でも「海外で学ぶ」という選択肢があり得るようになり、グローバル教育時代の幕開けとなります。
海外で学ぶとは言っても、学位を取る人はまだ少数で、語学学校や交換留学が主だった時代です。
この頃(1970年代頃から90年代中頃)は、インターネットは普及しておらず、以前にそこに住んでいた知人でもいない限り、海外の現地情報を入手するのは非常に困難でした。

インターネットが普及すると、GE2.0が起こります。テクノロジーの進展は、ブログなどの情報ツール、SNSの普及によって情報の個別化・拡散が起こります。これが90年代後半から起こってきた流れで、現在も主流です。
語学学校で終了ではなく、その後大学で学位を取るために学ぶという選択をする人が多くなりました。日本の大学でも、授業を全て英語で行う学部ができたり、1年間の留学をカリキュラムに取り入れたりする動きが活発化します。

このような時代に出現してきた新しいグローバル教育という意味で「3.0」と呼べるのが、先の21世紀型教育機構のセミナー記事に紹介されている各校の事例です。ミネルヴァ大学のようにキャンパスを持たない大学さえ出現し、VRなどの技術、またAIによるアダプティブラーニングが実用化されつつある段階においては、場所の制約はなく、言葉による制約すらなくなって、グローバル市民同士がつながるコミュニティになっていくというわけです。

株式会社カンザキメソッドの神崎代表は記事の中で次のように書いています
 

4名の先生方の実践報告を聴き、タイトルにある「コペルニクス的転回」とは「知識や技能がなければ、創造的思考は発動されない」という教育現場の一般的なとらえ方が大きく変わりはじめていることを指すのだと理解しました。グローバルコミュニティのアクセスや英語習得を教育活動に自然に組み込み、そうした試みによって子どもたちに学びへの好奇心を発動するという仕掛けを各校で施していることがわかります。
 
創造的思考を発動させたのちに知識や技術を習得したり、これらを体験の中で同時並行的に学んでいったりするわけです。日本の公教育では基礎的な知識・技能を鍛錬することに精一杯で、それが大学入試に直結するゆえに、創造的思考を育む教育が施されにくい状況にあります。
 
それを4校ではその壁を乗り越えようとしています。自己の成長を喜び、時には役割を変えながら、創造的思考で問題や課題を解決する。そうした子どもたちの理想的な姿を追い求め、各校では切磋琢磨しながら教育活動に取り組んでいることが伝わりました。

 

私は、座談会の司会役を務めていましたが、神崎氏の指摘に目を開かされる思いがしました。
知識・技能を知っている者が知らない者に教育を施すといった見方から、創造的思考を発揮できる環境づくり・状況設定にシフトしているのが現在出現しつつあるグローバル教育3.0なのだと思います。