数学における批判的・創造的思考

GLICCでは、理系教育とICT教育を専門とするFlipSilverlining社代表の福原氏にアドバイスを受けながら、21世紀型教育ベ-スの数学についての教材開発を、理工系学部に在籍している学生チュ-タ-と一緒に進めています。

これまでの受験数学では、「解法パタ-ンの暗記」と問題演習をきちんとこなすことによって、それなりに得点できるようになると言われています。さらに、それらの応用や組み合わせによって問題が解けるようになるのが数学の醍醐味であり、解けたときの爽快感が次の難問へと向かわせるのだという強化学習サイクルの考え方は、数学好きの立場から考えればもっともな理屈です。

こういった強化学習の効果について否定するわけではありません。また、問題解決のサイクルをどうやって作るかということは、近日中にGLICCの理系チューターにも記事連載をお願いする予定ですので、ここでは深く立ち入るつもりもありませんが、数学的思考ということには、問題解決の楽しみ以外にもあるだろうというモヤ感が常にあります。

そんなモヤ感を裏付けてくれるような記事を偶然ネットで見つけました。

Math’s Storytelling Makeover

ここでは、数学の問題をBefore/Afterの形で示し、プロジェクトベース型の学びにするためのコツが示唆されています。

「The Original Task」では文字が多く、様々な条件が示されていますが、「Updated Task」では、「どんなことに気づきましたか」「どんなところが不思議ですか」というシンプルな問いに変わっています。

この問いに対する答えは一つでないので、このような問いが活きるのは、授業であり教師の対話力なのですが、このような数学的思考力が試される入試問題はまだまだ少ないように感じます。

数学は、欧米よりも日本の方が高度だという誤解があるのかもしれません。実際、帰国生入試ではIBのHigher Mathであろうが、A-LevelのFurther Mathであろうが、ほとんど日本の大学では顧みられることはなく、あくまでも日本型の数学がきちんと解けるかどうかという力で判断されることが多いのです。その証拠に、いくつかの理工系大学は、帰国枠生を募集することを止めてしまいました。

しかし、海外で数学を得意としている日本の生徒が逆にCambridgeやMITなどのトップスクールを

目指しているという事実を日本の大学の先生方は把握しているのでしょうか。そこでは、「解ける」というだけではない、問題を設定する力などが評価されています。

最近IBディプロマが日本でもよく話題になっていますが、その中身(試験や学習)に切り込む記事が少ないのは残念です。日本の理数教育の尺度が必ずしも世界のスタンダードではないかもしれないということを見据え、21世紀型の数学力にももっと目を向けてみるべきだと思います。