高木チューターの【帰国生から見た日本】ー第1回「小学校低学年からの英語教育」

海外での高校生活を終え、すでに帰国して2年ほどが経過していますが、いまだに日本国内での生活で違和感を覚えることがあります。今回は、小学校低学年からの英語教育について、大学の授業で議論した際に感じたことを取り上げます。  このコンテンツの続きを読むにはユーザー登録(無料)が必要です。

その議論というのは、教員免許を取るための授業で、教育に関心を持つ学生が集まって行ったものでした。200名程度のクラスで、6人ずつグループになって話し合い、何組かが前に出て発表しました。
最初に違和感を覚えたのは、意見を発表する人の中に「身近でグローバル化を感じる機会があまりなく、何に向けて英語を勉強するか目的が見えない」という意見があったときです。
日本に暮していても外国人を見かけることは増えていますし、2020年の東京オリンピック開催で多くの外国人観光客が来日することも明らかですから、グローバル化を身近に感じないという感覚が不思議でした。

しかし、考え直してみると、確かに世界で起こっていることをニュースなどで報道する機会が日本で少ないのは事実です。海外のニュースが報道されていても、あくまでも日本への影響という観点からであったり、対岸の火事を見るような感じであったりということは関係していると思います。また、学校のクラスの中でも日本人ばかりがいるのが当たり前という環境ですから、そのような意見が出るのも無理はないのかもしれません。

もっと強烈な違和感を覚えたのは別のグループの人が次のような発表をした時です。「小学校低学年で海外へ行ってから日本に戻って来た帰国生は日本語も英語も中途半端な状態で帰ってくる。だから、英語をやる前にまず日本語という基盤をしっかりするべきで、小学校低学年では英語はやるべきではない。」といった内容でした。
これにはさすがに反発を覚えました。確かに海外で暮らしていて日本語も英語も中途半端になっている帰国生もいます(バイリンガルに対してセミリンガルと呼ぶようです)。しかし、そのような事例をもとにして、小学校の低学年で英語を学ぶべきではないという主張にはならないはずです。

私も小学校2年生の時に海外に引っ越しましたが、その際父が勤める会社から海外での教育についての冊子を渡され、かなり意識的に日本語や日本型の教科の勉強をしてきました。週末は日本語の補習校、そして日本レベルの算数数学を学ぶために塾にも通っていました。
このように書くと、それは特殊だとか可哀そうだなどと思われるかもしれませんが、多くの帰国生は当然のようにそういうことをしているし、海外の学校では小学校低学年で英語はもちろん、第2外国語も学んでいることがあります。私の場合はフランス語とスペイン語が必修でした。

私は、国内の人がそれくらいの意識で英語を学ぶべきなのではないかと思っています。国内に暮らしていれば、英語を少々学んだくらいで日本語の力が弱くなるなどということはないはずで、むしろ、日本人の英語力が世界の標準からどんどん取り残されていることに目を向けるべきだと思うのです。

英語は中学1年生でアルファベットから学べばよい、焦る必要はないと考える人もいるかもしれませんが、海外に出れば英語はできることが当たり前、できないというだけでワンランク下の人間に見られてしまったりする現実を知っておいた方がよいと思います。これからの時代では英語ができるから「凄い」ではなく、英語を話すことは当たり前のこととして求められてくるのではないでしょうか。