高木チューターの【帰国生から見た日本】第2回ーGap yearと就職に対する意識

先日テレビで、就職について海外と日本の制度を比較した番組を放送していました。日本では大学の新卒採用があり、入社式というものが存在します。また、終身雇用が保証されているうえに、同じ会社に勤めていればそれなりの昇給が期待できます。

それに対し海外では会社によって新卒採用は全く行っておらず、ベテランの転職者のみで回している場合もあるそうです。その理由は終身雇用も昇給も保証されていないためにそれぞれが様々な会社に勤めながら自身のレベルを上げていき、より給与のいい会社に転職していくのが主な就職スタイルだからです。ここで注目したいのは新卒採用と教育の関係です。今回はこのことについて考えてみます。

皆さん「ギャップ・イヤー(Gap year)」をご存じでしょうか。私はスウェーデンに住んでいたころよく耳にしました。
ギャップ・イヤーというのは、合格した大学から生徒に付与される入学前1年間の自由時間です。申請すれば高校を卒業後、大学に入学する前に1年間自由な時間が取れるという制度です。私の友人の多くもこの制度を利用していました。活用法は様々ですが、例えば大学で必要な学費をバイトで稼いだり、世界中を旅行していろいろな文化に触れ経験を積んだりしていました。IBの制度にしても「納得のいくスコアが取れない」と思えばまた1年やり直して最終試験の点数をあげようと頑張る生徒も珍しくありませんでした。

日本では浪人や留年はあまりいい印象を持たれません。浪人して1年無駄にした場合、ストレートで合格して就職した人よりも一生涯稼げる額が1000万円違うという統計を目にしたことがあります。信憑性は分かりませんが、こんな統計を出すほどストレート合格や、新卒で就職することが重要視されています。
ではなぜ日本では一斉に新卒者を採用するのか、それは日本の教育とも関係があると思います。日本の教育では、会社に入ってから必要となるスキルを身につけることには重点が置かれていません。そのため、新入社員は入社してから必要なスキルをそれぞれの会社で教えてもらう必要がある、いわば会社に育ててもらうのが日本のやり方だそうです。

私は日本に帰国して大学でプレゼンを見た時、そのレベルの低さに驚いたことがあります。データや事実を集めることよりも自分の主観的な意見を述べたり、内容よりも見た目に重きを置いていたりなど、正直唖然とするほどでした。でもそれは教わってきていないから当然で、右も左もわからない状態でプレゼンを課すということ自体が無茶なことだったのかもしれません。

海外の学校では、プレゼンテーションのやり方、レポートの書き方、説得力のある文章の書き方、電卓の使い方などを教える授業があります。職業に直結する教育というと、何かレベルが低いように思われるかもしれませんが、例えば生徒の夢がライターだとしたら、「ライターとして会社に入れる」ように海外の学校は生徒を育てます。日本では、会社に入ってから「ライターになる」のだから、学校では、その手前まででよいと考えている節があるのかもしれません。もしそうなのであれば、いつまでたっても新卒一括採用の慣行から離れられないのではないでしょうか。

参考: “池上彰のニュースそうだったのか”、テレビ朝日、5月20日放送