桑田チューターが語る「医学部ってどんなところ?」

みなさんこんにちは、初めまして。GLICCでチューターをしております、順天堂大学医学部3年の桑田力丸と申します。今回は、名前はよく聞く学部でありながらも、実際は謎に包まれた大学医学部の世界を、現実的に、ほんの一部だけ紹介したいと思います。大事ですよ、現実性。リアルです。同じこと言っていますね。 

みなさんは、医学部というとどういったことを想像しますか?

医者になるために勉強するところ?とりあえず成績がいいから行ってみる?しょっちゅう解剖しているの?ガリ勉や真面目な人ばかり?お金持ちそうだしお金もかかる?暗くて怖そう?

こんなイメージが多いと思います。一つ一つとしては間違っていないかな、と思いますが、実際に中にいると部分的にはそうかもしれないといった具合です。個人で見ても、1つ2つ当てはまればまぁいいほうですね。ちなみに、私は先に挙げたイメージの中では1つ目しか当てはまりません。無論、少なからず真面目だとは思いますが…(笑)

あ、それからなんといってもお金はかかります。学費はもちろんのこと、教材や道具など、結構な金額です。奨学金や補助金などもありますが、家計は本当に大変です。それでも通わせてくれる親には感謝するに尽きますね。

医学部にいる人たち

さて、まずは医学部にいる人たちの話から。医学部と言っても集まる人は多種多様です。勉強で全国トップクラスの人はもちろん、研究において才のある人、音楽や芸術、スポーツ競技で全国クラスや世界クラスの人もざらにいます。天は二物を与えずと言いますが、あれは嘘ですね。ある人物には二物も三物も与えていると思います。まったく不条理な世の中です。自分とは程遠い世界です…。陽気な人と陰気な人、その中間くらいでよくわからない人、群れる人と一人二人でいる人、真面目な人と不真面目な人など、性格においても様々です。医学部に来た理由や目的も多様で、臨床医になって直接治療をしたい人、その中でも外科系なのか内科系なのかで分かれますし、基礎研究をするいわゆる研究医になることで何か発見したい人、社会医学系の仕事に就いて社会の公衆衛生の向上に寄与したい人、省庁に入り官僚として働きたい人、中にはとりあえず医師免許だけ取っておきたいなんていう人や、まだ何がしたいかはわからないという人までいます。具体的に目標をもって医学部に入る人もいれば、漠然と医師にはなりたいけどどんな医師になりたいのかはわからない人もいます。

また、年齢層も幅広いです。私の同級生でも、現役生から再受験生まで、入学時の年齢にすれば18歳から22歳(これでも若い方)までと、単純に考えて大学1年生から4年生までが1学年に揃っています。それでも自然と仲良くなれるのは、年上の皆さんがすごいのかはたまた皆のコミュニケーション力が高いのか…不思議な世界です。なにはともあれ、多様な価値観やバックグラウンドを持った人が集まっているので、退屈しない環境であることは確かです。

医学部の授業の実態

続いては、皆さんが気になるであろう授業のお話。授業の内容というよりは、概要になります。

大学の授業というと、単位制で授業が自分の思う通りに取れて、時間割が自由に組めるし休みも作れる!自由で最高!!というイメージがありますが、医学部においてそれはまさしく“イメージ”、幻想にすぎません。私もそんな大学生活を夢見ておりました。ものの見事に打ち砕かれました。好きな勉強ができているから良いのですけれども。

ここでちょっと難しい話をしますと、医学の勉強は、文部科学省が定める「医学教育モデル・コア・カリキュラム」というものにのっとって、「多様なニーズに対応できる医師」になるために必要なことを6年のうちに学ばなければなりません。実際は5年次から臨床実習に出ることになるので、その前の4年間で知識はほぼ完成させる必要があります。その中には、大雑把にいうと一般教養としての分野、基礎医学としての分野、専門医学としての分野、医師としてのプロフェッショナリズムについての分野などがあります。解剖学や生理学などをはじめとした基礎系の科目でも、教科書にしたら数センチを超える厚さにおよぶ知識を数十科目分習得しなければならず、言ってしまえばやるべきことは膨大です。その分量を基本的には臨床実習に出る前までの4年間で学ばなければいけませんから、学生に自由に組ませていたら到底終えられません。また、臨床の講義となると現場の医師による講義となるため、ピンポイントで予定を組まねばならず、何曜日の何限はこの授業、という風に固定することができないのです。

そのため、私たちの講義は日割りです。カリキュラムに合わせて毎日毎時限で学校によって授業が組まれており、自分で組むことはありません。正確には、私の大学のような単科に近い大学では、1年次は必修が埋まっていて他は比較的自由に組め、2年次以降が上記のように学校側が授業を組んでくれるようになります。国立大学や総合大学になると、1・2年次はいくらか自由に組めて、3年次から上記のようになることが多いようです。そんなわけで、大学で教養をもっとやりたかった私としては残念ですが、教養は自ら学び涵養するものと自分を納得させ自学している毎日です。こんなことを言っている一方で、早く専門科目をやりたかった私としてはありがたいカリキュラムでもありますが…。

そしてなんといっても出席には厳しいです。休みすぎると定期試験の受験資格を失います。つまるところ留年ですね。とはいえ、授業に出ることは当然なので出席に厳しいという言い方もおかしな話ではありますが。ちなみに単位を一つでも落とすと留年になります。いわゆるフル単が基本です。こんな風に書くと「医学部怖い…やること多すぎ…勉強したくない…」となってしまうかもしれませんが、将来人の命を預かることとなると思えば当然ですし、実際やってみると案外すんなりと入ってきたりします。(もしかしたら自分が好きなことをやっているからかもしれませんが…。)

また、実際は細部まで完全に頭に入れる必要はありません。重要なポイント、絶対に落としてはいけないポイントというものは確実に押さえて、細かいところは必要な時に書籍や文書から抽出できれば良いのです。試験もそこが押さえられているかを問うてきます。事実、現場においても死や重大事故、感染拡大に繋がるようなことを第一に避け、そのうえで適切な対応を取ります。間違ってはいけないことを間違えないこと、これは僅かながらも受験勉強にも通ずるところがありますね。

長々と語ってしまいましたが、今回はこのくらいにしておこうと思います。また機会がありましたら、その時はもう少し入り込んだところ、例えば実際に学生がどのように過ごしているのかといった、いわゆるキャンパスライフについてお話しできたらなと思っております。それでは、またお会いしましょう。